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2008年3月22日 (土)

拝啓 川上弘美様

嫁まるちゃんと籍を入れること早1年半。
よ~~~やく、新婚旅行に連れて行くことができました。
行き先はインド洋の真珠の首飾り、モルディブに。
本当はもう少し早く行けないことも無かったんですが、ちょうど雨季の時期を避けてたらこの時期になっちまいまして。
モルディブ、良いところでした。
想像してください。
四方全てを海に囲まれた周囲徒歩10分ぐらいの小さな島に。
遠浅の海の色は見渡す限り薄いブルーで。
聞こえてくるのは寄せては返す波の音。
潜れば艶やかなサンゴに色とりどりのお魚達。
サンゴの粒で出来た、踏めばキュキュッと鳴る白い砂浜。
そしてそこにたたずむのは、ギリギリの海パン姿ののむりん。
OH,トロピカル!

さて、肝心要の?お酒でありますが、モルディブは敬虔なるイスラム教の国であります。
旅行者はリゾート先で提供されるお酒は楽しめるのですが、酒類の持ち込みなどは一切禁止。
リゾート先ではビールやらワインやらは提供されてはおりますが、さすがに常飲しております焼酎やら日本酒などは皆無でありまして、しばしのお別れ。
まあそれもたまにはいいかと割り切って、じゃあとにかくゆっくり読書でもしながらノンビリ過ごしたいにゃということで、出発前に入念に図書館巡りをしてきまして。
今回は、村上春樹、江國香織、隆慶一郎、東野圭吾、などなど有名処の作家の本を10冊ぐらい持って行ったのです。
(実際はそれでも足らなかったぐらいにノンビリして来たんですが)

しかし。が、しかし。
行きの飛行機で選択した本がまずかった。
川上弘美『センセイの鞄』。
数ある本の中からいきなりこれをチョイスしちゃったのがねえ。
なんでまたよりによってこれから日本酒断という時に、と。
トホホってなもんですがな。
いや、内容自体には問題はなく(むしろ面白かった)、困ったのはお酒です。
これを読んでたら強烈な渇きを覚えちゃいまして。
その渇きとは、お酒そのものを呑みたいというのではなくてですね。
こうした呑み手に僕もいつかなれるんだろうかという、どちらかというとそっちの方なんです。
本の冒頭から居酒屋のシーンが出てくるんですが、これがタマラン。
塩らっきょ、蓮根きんぴら、まぐろ納豆、あたりを肴に主人公のツキコさんとセンセイが日本酒の熱燗を呑むんですな。
著名なお酒の銘柄をあげるでもなく、お酒の味わいの描写があるわけでもない。
が、なんといってもここでセンセイがお酒を呑まれる時の所作がまた秀逸で。
基本的に手酌。
卓上に置いた杯よりも随分高いところで、一合徳利をちょっとだけ傾ける。
杯すれすれではない。
細い流れをつくったお酒は杯に吸い込まれるようにとくとくと音をたてて注がれる。
しかし一滴たりともこぼすことはない。

くぅぅ。いいなあと。
日本酒など、普段呑まない人にですら「ああ、いいなあ」と思わせる描写がそこにありましたもの。
そしてそして、わが身を振りかえますと。
綺麗な所作かあ。
ほど遠いよなあ、と。
一度足りとて、徳利からツツーと綺麗に注げた記憶なく、いつもジョボジョボと鳴る杯。
口の中のお酒は気にしたことがあっても、口に入る前のお酒への姿勢は、気にしたことも無く。
お酒の銘柄だとか、温めるときの温度だとか、そんなことに対する愛情だけでは足らないものがあるんじゃないかと思い知ったわけで。
まなじりを大きく開けて愛を叫ぶようなやつじゃなくて、いとしむようにお酒とひっそり寄り添うような愛し方。
これって僕にはまだ欠けているんじゃない?と。

思えば、呑む時に徳利から杯にお酒を注ぐという行為は日本酒特有のものだけど(当然ながらそれお燗だ)、デキャンタからワインを注ぐあるいは瓶からビールを注ぐというのとはまた違った、まるで赤ちゃんの手のひらのような温くて柔らかい湿り具合がそこにはあるような気がするのです。

ようやく新婚旅行を終えて帰宅した後、焦燥にも似た感覚を持ちつつおいらもいよいよセンセイの技を実践に。
自分への結婚指輪の代わりに、嫁まるちゃんより頂いた徳利と猪口で手酌晩酌。(これ、マジで手に吸い付くような素晴らしさです)
本日のお供は、いよいよ残り少ないH10BYの釜屋「おこぜ」。
これをじっくりと錫チロリで温めて、それを同じく湯に漬けて温めておいた徳利に移す。
じゃあこれをセンセイと同じようにツツーっとやりますかいな!と。

・・・んが!!??
・・・こぼれる、遠慮なく。
・・・音が鳴る、ジョボジョボと。
どうにもこうにも、高くあげて綺麗にツツーと注ぐなんて、出来ませんねん。

こぼしたお酒はせっせと手の甲につけて純米酒パック。
しかし肌に呑ませるだけにしては贅沢すぎる。
その後何度かチャレンジするも、なかなか難しいや。
どうすりゃいいんかいな・・・と、杯を前に悩む悩む。
ん!でも徳利を杯すれすれから徐々にあげて行くというのならできそう。
これがやってみると・・・お!なかなか悪くない。
ちょいとまだ跳ねるけど。
悪くは無い、と思う。
でもでも。まだまだ居酒屋で一人徳利を綺麗に傾けられる親父への道は遥かに遠いよなぁ。
といいつつ一献、更に一献と。
ノックを受ける野球選手宜しく、僕はジジっと杯を受けるわけです。
代わる代わる、何度でも、何杯でも。

本格的な春が、もうすぐ桜を手土産にやってきます。
しかしいつか桜の木に恥じぬような所作を身につけて、桜花舞う中で美味しいお酒を呑めるようになっていたいもんですなぁ、と。
今宵も1人、やっぱり銘酒だよなあと思うお酒達を、特打ちノックを受けるが如く杯を干すわけであります・・・

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コメント

 精進していますね!のむりんさんっ!!
 私もかっこいい呑み手になりたいなあ。
 道は険しいです…
 日本酒肌パックは、けっこうしょっちゅう
やっちゃってます… もったいない。。

 それにしてもモルディブいいなあ。
 素敵なところに連れていってくれる
旦那さんで、妻・まるちゃんがうらやますぃ!!
 やはり愛情は持ちつ持たれつ、錫のちろりを
プレゼントしてくれる奥様だからこそ、
大切にしなきゃ、って思うってもんだ
(なんだこの言い回しは)
 うちも… 見習わなきゃ…
 
 

投稿: りえぞ | 2008年3月22日 (土) 16時10分

こんにちは。
モルディブ良かったようですねえ。
うちも候補だったのですが、結局ニューカレドニアに行きました。
一度は行ってみたいです!

「センセイの鞄」いいですよねえ。
嫁さんが川上弘美さん好きなので、家に何冊かありますが、1番好きです。
以前、柄本明さんとキョンキョンでドラマ化されまして、なかなか良かったです。
特にドラマの中で、居酒屋のシーンが多く、当時はそんなにお酒にはまっていなかったのですが、「旨そう~」と思ったものです(*^_^*)

投稿: キム | 2008年3月23日 (日) 17時22分

りえぞさん

はい、精進あるのみ。
でも今日も晩酌してたら嫁まるちゃんから
「左手を床におかないっ」
「背中が丸まっているっ」
という叱責の声が!

居酒屋「作」で実地修行しようかな・・・
どうぞビシバシ鍛えてください。

なにいってんの、マスターはとても優しそうではないか。
きっとりえぞさんに足らぬところをいろいろ補ってくれていることに気づいているんでしょ?(笑)
そう、我が家でビシバシおいらが嫁まるちゃんに鍛えられているように・・・

投稿: のむりん | 2008年3月24日 (月) 00時52分

キムさん

お、天国に一番近い島ですね!
一度行ってみたいところですねえ。

「センセイの鞄」、いい表現しますよね。
凄く日本酒が呑みたくなりましたもの。
でも、あんな呑み手にはなかなかなれそうにないなあと・・・

ちなみに僕のセンセイのイメージはもう少し若かりしころの三國連太郎さんでした(笑)
柄本明さんとキョンキョンのやつも是非みてみたいものです。

投稿: のむりん | 2008年3月24日 (月) 01時00分

新婚旅行楽しかったようですね♪

「先生の鞄」きょんきょんと柄本明さんの良かったですね。
あの居酒屋でのシーンは最高でしたね。
本では読んだことがないんですが、今度探してみよう。

そういえば漫画「レモンハート」日本酒編で粋な晩酌のシーンがあって、何度も読み返した覚えがあります(^_^)

投稿: マーキー | 2008年3月24日 (月) 23時14分

[壁]・) コッソリ
のむりん来ちゃった・・・
コメ思いつかないからこのまま滑るようにマタネ!
|彡サッ!

投稿: 鯵ポタ屋 | 2008年3月25日 (火) 00時24分

マーキーさん

お、マーキーさんも映画みたんだぁ。
本は映像が無いだけにやたらイメージが膨らむんですけどね・・・映画、どうなんだろう。見てみようかなぁ。

そしてレモンハートに日本酒編があることを今知りました!
これも明日探してみまッス

投稿: のむりん | 2008年3月25日 (火) 01時17分

鯵ポタ屋さん

家政婦は見た、みたいな登場がまた・・・(笑)

いつか、こんなシーンに合うような杯を買いに行きます。
花の形になるお皿はとてもステキでした。
また、「作」で呑みましょっ

投稿: のむりん | 2008年3月25日 (火) 01時19分

モルディブ、人生一度は行ってみたいバカンスです。「あそこは、ヘリからドボンって海に落とされて島にたどり着くんだよ」、って言ってた友達の言葉は冗談だったんでしょうか・・・。

>卓上に置いた杯よりも随分高いところで、一合徳利をちょっとだけ傾ける。

うぅ・・・いつも「お酒をこぼしたら勿体無い!!」と思い、ギリギリの位置から真剣に注いでいる自分です。。。

投稿: まき子 | 2008年3月25日 (火) 04時48分

まき子さん

モルディブはいいところでしたよ~是非行って下さい!
ヘリから落とされる・・・のではなく、ヘリから自らダイブしたくなるような海でした。

お酒はおいらも徳利の最後の一滴を絞り出すタイプなんで、今回のはとてもキツい 涙
しかしいつか徳利と猪口の似合う人になりたいなあ~

投稿: のむりん | 2008年3月26日 (水) 17時04分

センセイの鞄、読んだら澤乃井を無性に飲みたくなりました〜。

投稿: 地酒星人 | 2008年3月28日 (金) 19時19分

地酒星人さん

そうそう!わかりますねえ!
文中にこの銘柄が書いてあるときに、おいらも思った。
これは無濾過生原酒なんてありえなくて(笑)、きっとそんなお酒が似合うんだろうなあと思った次第です。

それにしても地酒星人さんも、この本をブログに書かれていたのですね。
トラバ、ありがとうございました。

投稿: のむりん | 2008年3月30日 (日) 01時54分

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川上弘美の小説が好きだ。 今までにそんなに数を読んでいるわけではないし、すべてを [続きを読む]

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