八月のとある土曜日の話なのですが
嫁まるちゃんが家に不在だったのです。
ええ、珍しいことです。
そして普段の休日はといえば昼近くまでずーーーーっとただただ寝てるオイラ。
でも嫁不在の日に限って何故かスパスパッと朝だというのに目が覚めちゃってね。
ええ、これまた珍しいことです。
さて1人でどうしようかなーと顔をジャブジャブ洗って朝ごはん作ってモグモグと頂いて歯をシャコシャコ磨きつつ考えた・・・そうだ、未知の街へ行こう。
そう、散歩しつつ趣味の酒屋さん巡りってやつ。
今日も街のどこかにボクを待ってる酒がある、のを信じて街へ出るのです。
電車に乗り込み、目星をつけた駅で取り合えず降りてみる。
改札出たら大通りを進む?それとも路地裏入っちゃいます?なんてのも思いのまま。
いつもは隣から歩くのが早いとか路地裏につっこむなーーーとか腕を引っ張られるのですが、今日は1人。
誰も気にせず、誰からも気にされず。
どんな出会いがあるのやら?とほのかな期待を酒用バックに詰め込んで、スタスタスタタとあの道この道ゆくゆくだけであります。
まずは一軒目。
線路脇にある酒屋さんを見つけましたがな。
中は・・・うわわ、お店の電気もつけずに暗い雰囲気。
だけどフラリと入ってみますとですね。
「光はお酒の大敵です」という張り紙があってね。
こりゃあ結構期待できたりして。
そしてこういう予感は得てして的中。
やっぱありましたよ冷蔵庫の隅の方に、なんともまあ見事な熟成酒。
うわあこんなのあるんですかあと思わず感嘆の声をあげちゃう。
そのお酒はもはや蔵元にもありませんから、と誇らしげに胸を張るレジの前のおばあちゃん。
よくまあ気付いてくれたわねえ、どちらからいらっしゃったの、あらあらそんな遠くか
ら。うちもいろいろ実験的にやってみてるつもりなの。うちの息子がねぇ●※△な上に
お嫁さんも◎$◆▽なのよ。だからうちはこういうのにこだわりたいのよ。
ホホホと笑うその顔は「充」という言葉そのまんまにみえるこちらのおばあちゃん。
ひっそりと置かれていたこの生もとのお酒。
すんませんじゃあ今日はコレを頂いて帰ります、とおばあちゃんの皺くちゃの手に渡してお会計済ませてね。
ええなあ。いい一日のスタートですなぁ。
よしよし軽快なスタートじゃんと足取り軽く次なるお店へ向かいますと、何やらその店頭に張り紙が。
今月でお店を閉めます。
そんな意味のことが、書いてありました。
店頭で立ちすくんでいるわけにもいきませんから、とりあえず入ることに。
自分以外に客はおらず、ぶ~んという冷蔵庫の音だけが鳴り響いてて。
冷蔵庫を開けてお酒を取り出す時の音も、カチカチと何故か普段より大きく聞こえるわけで。
倉庫を整理してたら出てきたという熟成酒を何本か陳列しているとのことでしたが、中でも復古米の『強力』を使った鳥取の蔵の日本酒が気になる。
四年熟成の無濾過生原酒。
程よい期間ではないですか。
それを片手にレジにいきますと、丁寧な物腰のご主人が。
少し、話をさせて頂く。
もちろん「どうしてお店を閉めるのですか?」なんて聞けるわけでもないのですが、また来ます、とも言えぬ帰り際。
もっともっと、世の人が美味しいお酒を呑んでくれればいいのに。
それから二時間ぐらいかけてズシっと酒用バックが肩に食い込むぐらいに歩き回りいよいよ足が重くなってきたかなあと感じはじめてたら、折り良く来た時とは別の路線のとある駅に到着したんで本日のお散歩これにて終了。
電車に乗っている間に激しい雨が降ってきて、あらら傘なんて持ってないのにと思ううちに最寄の駅まで着いちゃって。
お酒を数本持って走ってるうちに何かの拍子でお酒が割れたら嫌ですからねえ。
走って帰るわけにもいかず、ここはもう諦めて駅から自宅までビッチョリ濡れつつ歩きましょうか。
誰もいない家に帰ったらちょっと熱めのシャワーを浴びて、出たら出たで冷蔵庫の中にあった麦酒をプシュシュッ。テヘ。『琥珀エビス』。これをずっと取っておいたのだ。
で、オリンピックみながら、ちょいとうたた寝。
これまた贅沢だわぁ。
で、起きたらもう夕方で、その後はT君夫妻と合流して三人で上石神井に。
ええ、居酒屋「作」に決まってますよ。
夏の夜、夕涼みがてら友と燗酒尽くし。
これも贅沢ってもんです。
ここでは銘柄はマスターにお任せしちゃうのが一番。
こんなの呑みたい、ってのをお伝えすると、もう見事なチョイスで美味しいお酒が出てきます。
「山廃のお酒で旨みがノリノリのやつを」⇒日置桜の強力
「熟成したゴッツイの」⇒竹鶴のH12BY
「口当たり優しいの」⇒鉄人うすにごり
「にごったの」⇒生もとのどぶ
もちろん全て燗ですがな。
食事も美味しくてね。
そして3人で楽しく食べて呑んでたら、携帯にメールが。
あ、嫁が家に帰ってきたようで。
程なくしてお腹一杯燗酒いっぱい心も満杯!になったんでそれぞれ家に帰りましてですね。
家に着いたら嫁がどんな1日だったの?と聞くので、いや~寂しかったですよと。
ほんと?いやいやホントです。
1人でどうしたらいいか良くわかんない1日でした。
何をしてたかって、起きて朝ご飯つくって食べてそのあと散歩してでも途中で雨に降られたりしてもう大変でその後はふらっとT君夫妻と今まで呑んでただけよ。
お酒買ったのかって?うん少しだけね、小さい瓶のやつ。
なんか全然寂しそうじゃないじゃんって?
いやいやそんなことないですよはい。
でも今日もお酒に囲まれて、友と語らって、そんな1日でありましたけど。
たまにはこんな1日もエエよなあと思うのでありますけど。
そういうことは、『こっそり』と思うことにしてますので。
いや~寂しかったんだよねえ。
と繰り返す、とある八月の土曜日なのでありました。
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